http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1411/13/news061.html
 読んだ。
 読んだっつーかひさしぶりにマック行ってきた。どれくらいひさしぶりかというと、少なくとも1年くらい。ドライブスルーだったらもうちょい頻繁に利用してたけど,店舗に入るのって本当にひさしぶりだと思う。
 利用しなくなった理由としては、ひとまず禁煙になったってのがいちばんでかい。特にPC引っ張りだして作業する場合に、喫煙者にとっての禁煙は厳しい。それとあれな、隣にドトールあるから。
 今回入った店のプロフィールだが、郊外のロードサイド沿い。海にも近いから夏場は観光客でごった返す。周囲に直接の競合になる飲食店は特にない。ファミレスが数軒あるが、ガストとかサイゼリヤではないので価格帯が違う。最寄りの牛丼屋までは車で15分くらいだ。まあ車社会では競合する範囲ではあるが、俺が今回行った昼飯時だと移動範囲は狭まるから、まあ競合とは言いづらい。
 そういう立地だったので、わりと繁盛している。昼時なんかだと店内に入ると相当に客席は埋まっている。座席数がそこそこ多いせいもあって、座る場所がない、というほどではないが、移動中のリーマンから近くの現場の土方、さらにおばちゃんやら子供連れのお母さんやらの井戸端会議の指定会場でもあったので、少なくとも昼時に作業できるような雰囲気ではない。
 そんで今日、ちょっと昼というには遅かったのだが、店内に入ってみた。そしてびびった。先客は一人。一人だよおい。
 あまりに極端だ。極端すぎる場合は「たまたまそうだった」という可能性を疑うのが基本だけど、それだって昼時にコンスタントにピークがある店って、そうそう極端には日による客数は変わらないものだ。
 そういえば、と思いあたることがある。この店、以前は夕方あたりに通ると、敷地内では収まりきらないくらいにドライブスルーを利用する車が多かった。それを最近あまり見かけない。
 ほんとに客数激減してるんかねーと思いつつ、注文のためにカウンター背後のメニューボードを見ていた。とんかつバーガーがおすすめらしい。セットで550円。単品だと370円。
 370円!?
 なにそれ。高くね?
 というより全体的にメニューから「高い」という印象を強く受ける。
 価格に対する感覚ってのはわりと相対的なものである。どこで食っても一食1000円の状況なら550円は安い。もちろん俺もそこから自由ではない。たとえば10年前あたりと比較すると「メシにかける金」に対する感覚はだいぶ変わっているはずだ。とにかく現在の俺は「高い」と感じた。
 金を払う段になるとメニューの価格に消費税がかかってくる。消費税増税にあわせて価格表記のルールが変わった。税込みの総額表記のみの状況から、税抜き価格、税込み価格の両方の表記に。俺このへんあんま詳しくないんだけど(いいのかそれで)、所定の条件さえ満たせば税抜き価格のみの表記でもかまわないようだ。
 そうなると、税抜き550円の価格はほぼ600円近くに化ける。この「化ける」感じがけっこう重たい。
 増税の影響っていくつかあると俺は思ってるんだけど、ひとつはこの表記ルールの変更がでかいと思ってる。税込みから税抜きの表記になって「見かけ上」はあまり変わらないかあるいは安くなるんだけど、実際に払うときには「思ったより高い」ことになる。この「思ったより」の部分が重要で、金を払うということは毎日の行動である以上、日々「思ったより」が続くと「節約しなければ」という気分になってくる。各業態、特に日常にベタである業態ほど増税の影響が大きいと思うのはこのへんだ。
 座席に座ってから考えた。
 気がついたことはいくつかある。価格の問題はすでに書いた。
 あと、店内がぼろい。もともとマックには「店内がぼろい」というイメージはあまり持っていなかった。しかし数年前からマックがぼろいと感じることが増えた気がする。これ、単純にスクラップアンドビルドが進んでないんだと思う。店舗数が減少する一方だと、既存のそこそこ体力のある店しか残らない。その既存の店も建て替えをするほどの余裕はない。マックは連綿とFCの比率を上げてるからなおのこと。新しさ、清潔さを訴求できないのは飲食業としてはちょっと致命的だ。この「店舗が(相対的に)ぼろい」という現象は店歴の関係で日本全国同じように進んでいるはずだと思う。
 そして俺の目の前にあるとんかつバーガー。俺は「単品370円」という表記をすでに見てしまった。その370円のブツが目の前にある。
「ねえわ」
 これが俺の印象だ。セットで550円という把握ができなかった。「このハンバーガーが370円」という感覚で目の前のとんかつバーガーを見てしまう。そうなると、わびしさみたいなものがすごい。

 あたりまえの話なんだが、飲食業ってのは、店に入ってから食って出て、食ったあとの印象含めて商売である。俺はいまコメダで590円出してたっぷりブレンドを飲みつつPCでテキスト叩いている。それに590円出せるのは、コメダが長時間の作業を拒まない業態であるということ、座席の座り心地、周囲の静かさを含めたトータルなものだ。逆に牛丼屋なんかだとメシが出てくるまでの時間も重要だ。んで、特盛りでもそこそこの価格で「あー食った」という感じを味わえる。これも重要。業態により提供できるものはさまざまだが「メシを食う」ということをひとつの体験としてとらえたときになにを提供できるかが重要だっていう点では一緒だ。
 さて、そこでマックである。なにが提供できるのか。
 まずメシが出てくるまでの時間である。カウンター近辺で待たされる。この「カウンター近辺で待たされる」というのは感覚的にはめちゃくちゃ長く感じる。コンビニ弁当の温めの45秒をやたら長く感じる経験ってのはだれにでもあるだろう。
 そして出てきたものはパッケージに入っていて「おいしそう」という感じはとうぜんない。そしてそのおいしそうではないものを自分で座席に運ぶ。椅子の座り心地はあまりよくない。肝心のメシ本体はハンバーガー1個が牛丼よりも高い。トータルでのカロリーはポテトもあるからそこそこあるが、かといって「よく食べた」という感覚はほとんどない。
 そして食べ終わったあとのトレーは自分でかたづける。
 結論からいえば「食事」という体験として、非常に貧しい。
 おそらくなんだが、持ち帰り用、あるいは移動中の食べ物としては現在でもマックの優位性はそこそこある。というのは、箸を使わない。箸を使わずに食べたいシチュエーションってのは意外にある。さらに持ち帰りのためのパッケージが確立してるってのもでかい。ドライブスルーというシステムそのものも優位性に貢献する。いまでもドライブスルーだけはそこそこ人気のある店は多いはずだ。
 でも、外食産業としてはだめだ。

 逆に考えるなら、なぜかつてはそこに不満を持たなかったのか、ということでもある。これに関しては仮説は世間でいくらでも出てる。そしてたぶんそれらの複合的な要因だ。
 個人的につけくわえることがあるとしたら「場としての機能」を失ったことがいちばん大きいと思う。人が集まって小腹満たしつつしゃべったりする、という場所としての機能。失われた理由は、まあたとえばガストだとかスタバだとか競合の存在も大きいんだが、俺これって「かつてのマックの遺産」が賞味期限切れになったのがいちばんでかいのではないか、と思っている。
 まあ年食った人は知ってるように、かつてのマックにはステータス感があった。人が集まる場所にはなんらかのハレの要素が必要で「みんなでどこか」ということになったときに、そのステータス感の残照みたいなものはけっこう生きてたんじゃないかと思うのだ。そしてそれを知っている世代は、いまマックを利用する理由がなくなってきた。そこへ拍車をかけて食材の問題だとか競合の問題だとかがかぶってきた。
 というわけで、要因はいろいろあれど、俺、根本的にはマクドナルドという企業が50年先を見てなかった、というのが致命傷だったと思ってる。企業は、その規模がでかくなるほど、見通さなきゃいけない先が遠くなる。世代間継承に失敗したんだろうな、というのが俺の意見。

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