別にどうってことない光景だったのかもしれない。
 子供がコンビニの店内ではしゃいで走り回っていた。金切り声を上げながら売場のあちこちをぐるぐると回っている。母親はレジで会計をしていて手が離せない。声はかけるしなんとか落ち着かせようとするのだが、子供はまったく言うことを聞かない。いい悪いの問題ではなく、子供というのはそういう生物だ。いってみれば自然現象みたいなものだ。
 子供が外に出ようとした。見るに見かねたのだろう、店員が「走ると危ないからね。お母さんが待ってるよ」と声をかけた。まあ妥当な対応だと思う。違和感があったのは、そのときの母親の反応だった。
「申し訳ありません」
 そこまでは別にいい。そのあと母親は、なにか悪いことを咎められたような顔をした。
 俺から見ても、店員は咎めるような口調ではまったくなかった。手が離せない母親のかわりに子供が外に出るのを防ごうとした。そういうふうにしか見えなかった。
 しかし母親はそうは受け止めなかった。あの反応を分解して考えるなら、本来かけるべきではない迷惑を他人にかけた、子供を連れて出たことじたいがよくないことだったのだ、というような感じだ。
 コンビニは子連れで来るのにまったく不自然な場所ではないし、はしゃぐのも不自然な行動ではない。都心のど真ん中ならともかく、こういう場所で子供がはしゃぐことは世間的に見て充分に許容範囲のはずだ。
 しかし母親にとってはそうではなかった。
 ここから俺が導き出した結論はこうなる。
 つまり、子供を連れて外に出ることじたいが罪悪であり、申し訳ないことである。自分で面倒をみきれない子供を連れて申し訳ありませんでした。母親の反応は、そうとしか見えなかった。

単なる特殊事例だったのかもしれない。
 ただ確実なことは、あの母親には「子供がだれかに迷惑をかけたらその全責任は母親にある」という無形のプレッシャーがかかっているということだ。だれがそういうプレッシャーをかけたのかはわからない。

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